PTRAとは
PTRAとは、経皮的腎動脈形成術のことで、Percutaneous Transluminal Renal Angioplastyの頭文字をとってPTRAと呼ぶ。このPTRAは腎動脈狭窄(RAS:renal artery stenosis)に対してカテーテルを用いて経皮的に血管内治療を行う手技になります。使用できるデバイスは基本的に下肢EVTで使用できるデバイスを使うことができます。ガイディングカテーテルは専用の形状だったり、専用の長さの物があるので院内に無ければ取り寄せる事が必要になります。あとはステントが専用の腎動脈専用のステントになりますので、ステントも院内に無ければ取り寄せる事が必要になります。
PTRAで準備する4種類のデバイス
PTRAに最低限必要になる、絶対に準備しておくべき4種類のデバイスを紹介します。病院内に常備していない事が多いので、症例前に準備が必要になります。症例があればディーラーにこの4種類を持って来てと言えば準備してもらえます。出入りしているディーラーが詳しい人であればPTRAのデバイス準備して欲しいの一言で準備してもらえます。デバイスの詳細については[準備するデバイスの詳細]にて後述します。
- PTRAに適したガイディングカテーテル
- EVT用のガイドワイヤー(腎動脈の穿孔リスクを避ける為、滑りにくく柔らかいワイヤーが望ましい)
- EVT用のバルーンカテーテル(病変長が短い事が多い為、バルーン長が15mmで6Frガイディング使用できる物)
- 腎動脈用のステント
PTRA手技の手順
PTRA手技の手順なんですが、やる事はシンプルで、PCI(冠動脈インターベンション)を簡略化した事というとイメージがわきやすいです。PCIに近い事をしますが、ガイディングカテーテルをしっかりエンゲージしなくても、腎動脈付近にガイディングカテーテルを進めて治療対象の血管の方向に先端を向けるだけで、そこからはガイドワイヤーで腎動脈内を選択していきます。あとはバルーンとステントの治療になります。手技時間の目安として、造影剤が使用できるかとか、ワイヤーがなかなか進まないとか、左右両腎動脈を治療するとか、いろんな事が想定されますが、だいたい入室から退室までで1時間半程度と想定されます。
- 必要ならPIGテールカテーテルなどでAOG(大動脈造影検査)をして腎動脈の狭窄度を診断
- ガイディングカテーテルを挿入し、腎動脈付近まで進める
- ガイドワイヤーを挿入、ガイドワイヤーはあまり末梢まで進めない方が穿孔リスクを低減できる
- バルーン拡張
- ステント留置
- 必要ならバルーンカテーテルで後拡張
- 最終造影で治療部位と腎動脈のワイヤー穿孔が無い事を確認して終了
準備するデバイスの詳細
ガイディングカテーテル
ガイディングカテーテルは穿刺箇所によって形状と長さが変わってきますので、症例が入ったら念の為、Radial approach用とFemoral approach用のどちらでも対応できるように準備をしておくと、穿刺部が急に変更になっても対応できると思います。
コーディス ブライトチップ
形状 | 左TR穿刺 | 左DR穿刺 | 鼠経穿刺 | 有効長 | 外径 | 内径 | 適合シース |
---|---|---|---|---|---|---|---|
JR4.0 | ○ | ○ | 110cm | 6Fr | 5.3Fr/0.070” | 6Fr | |
MPA | ○ | ○ | 120cm | 6Fr | 5.3Fr/0.070” | 6Fr | |
RDC1 | ○ | 55cm | 6Fr | 5.3Fr/0.070” | 6Fr | ||
RDC | ○ | 55cm | 6Fr | 5.3Fr/0.070” | 6Fr |
メディキット ペアレントプラス45
形状 | 左TR穿刺 | 左DR穿刺 | 鼠経穿刺 | 有効長 | 外径 | 内径 | ※適合シース |
---|---|---|---|---|---|---|---|
JR4.0 | ○ | ○ | 115cm | 6.6Fr | 5.7Fr/0.075″ | シースレス | |
PTRA | ○ | ○ | 115cm | 6.6Fr | 5.7Fr/0.075″ | シースレス | |
R1 | ○ | 48cm | 6.6Fr | 5.7Fr/0.075″ | シースレス |
※シースinシースをやるなら7Frシースが必要
ボストン マックワン
形状 | 左TR穿刺 | 左DR穿刺 | 鼠経穿刺 | 有効長 | 外径 | 内径 | 適合シース |
---|---|---|---|---|---|---|---|
RDC | ○ | 55cm | 6Fr | 5.3Fr/0.070” | 6Fr | ||
RDC1 | ○ | 55cm | 6Fr | 5.3Fr/0.070” | 6Fr | ||
RE-S | ○ | 55cm | 6Fr | 5.3Fr/0.070” | 6Fr | ||
RE-SS | ○ | 55cm | 6Fr | 5.3Fr/0.070” | 6Fr |
ガイドワイヤー
前述したようにPTRAに求められるガイドワイヤーは滑り性能はいらなくて、先端が柔らかい物、さらにデバイスデリバリーの際に必要になる適度なサポート性が必要になります。基本的にRX(Rapid Exchange/モノレール)のデバイスで手技ができるのでワイヤー長は短い物で完結できます。
柔らかいワイヤーではワイヤーの通過が困難になる事があるので、ここで記載するワイヤーの他に普段EVTで使用しているワイヤーもバックアップで準備していると良いかと思います。
製品名 | 先端荷重 | ポリマーコート | 長さ | メーカー名 |
---|---|---|---|---|
Spindle xs0.7 | 0.7g | 無し | 300 | AIJ |
Chevalier 14 Support | 0.7g | 無し | 235/300 | ニプロ |
Chevalier 14 Universal | 0.8g | 無し | 190/300 | ニプロ |
Agosal xs0.8 | 0.8g | 無し | 180/300 | AIJ |
VASSALLO GT14 Support | 1.0g | 無し | 190/300 | Cordis |
バルーンカテーテル
PTRAでは病変長がかなり短い為、バルーン長が短い物だけ準備してもらえれば大丈夫です。具体的にはバルーン長が15mmから20mm程度で良くて、主に使用するのが15mm長になります。通常のバルーンの他にカッティングバルーンを準備しておくと良いかと思います。今のカッティングバルーン(Wolverine)は4mm径までなら6Frのガイディングカテーテルに挿入できます。
コーディス アビエータープラス RX(Rapid Exchange/モノレール)
バルーン径 | バルーン長 | 適合ガイド | シャフト径 | 有効長 | カタログ番号 |
---|---|---|---|---|---|
4.0mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-4015W |
4.0mm | 20mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-4020W |
4.5mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-4515W |
4.5mm | 20mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-4520W |
5.0mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-5015W |
5.0mm | 20mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-5020W |
5.5mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-5515W |
5.5mm | 20mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-5520W |
6.0mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-6015W |
6.0mm | 20mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-6020W |
7.0mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-7015W |
7.0mm | 20mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm | 424-7020W |
ボストン ウルヴァリン ペリフェラル カッティングバルーン RX(Rapid Exchange/モノレール)
バルーン径 | バルーン長 | ※適合シース | シャフト径 | 有効長 | カタログ番号 |
---|---|---|---|---|---|
2.5mm | 15mm | 6Fr | 2.6-1.8Fr | 143cm | H74939345251510 |
3.0mm | 15mm | 6Fr | 2.6-1.8Fr | 143cm | H74939345301510 |
3.5mm | 15mm | 6Fr | 2.7-1.8Fr | 143cm | H74939345351510 |
4.0mm | 15mm | 6Fr | 2.7-1.8Fr | 143cm | H74939345401510 |
※表記はないが、ウルヴァリン ペリフェラル カッティングバルーンは6Frのガイディングカテーテルに入ります。
ボストン スターリング モノレールタイプ
バルーン径 | バルーン長 | ※適合シース | シャフト径 | 有効長 | カタログ番号 |
---|---|---|---|---|---|
4.0mm | 15mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-40151 |
4.0mm | 20mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-40201 |
4.5mm | 20mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-45201 |
5.0mm | 15mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-50151 |
5.0mm | 20mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-50201 |
5.5mm | 20mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-55201 |
6.0mm | 15mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-60151 |
6.0mm | 20mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-60201 |
7.0mm | 15mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-70151 |
7.0mm | 20mm | 4Fr | 3.8-3.4Fr | 135cm | 39031-70201 |
※表記はないが、スターリング モノレールタイプは6Frのガイディングカテーテルに入ります。
腎動脈用ステント
腎動脈には専用のステントがあります。現在使用可能なステントは2種類となっており、パルマッツジェネシスとエクスプレスSDになります。下肢用のステントは適用外なので注意してください。なお、パルマッツジェネシスとエクスプレスSDは共にバルーンでステントを拡張する、バルーンエクスパンダブルステントになります。
コーディス パルマッツ ジェネシス RX(Rapid Exchange/モノレール)
ステント径 | ※ステント長 | 適合ガイド | シャフト径 | 有効長 |
---|---|---|---|---|
4.0mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm |
4.0mm | 18mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm |
5.0mm | 12mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm |
5.0mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm |
5.0mm | 18mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm |
6.0mm | 12mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm |
6.0mm | 15mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm |
6.0mm | 18mm | 6Fr | 3.3Fr | 142cm |
※ステント拡張前の長さになります。拡張後はステント径が4-5mm径だと拡張前よりマイナス1mm、6mm径だと拡張前よりマイナス2mmになります。
ボストン エクスプレスSD モノレール
ステント径 | ステント長 | 適合ガイド | シャフト径 | 有効長 |
---|---|---|---|---|
4.0mm | 15mm | 6Fr | 3.2Fr | 150cm |
4.0mm | 19mm | 6Fr | 3.2Fr | 150cm |
5.0mm | 15mm | 6Fr | 3.2Fr | 150cm |
5.0mm | 19mm | 6Fr | 3.2Fr | 150cm |
6.0mm | 14mm | 6Fr | 3.5Fr | 150cm |
6.0mm | 18mm | 6Fr | 3.5Fr | 150cm |
7.0mm | 15mm | 7Fr | 3.5Fr | 150cm |
7.0mm | 19mm | 7Fr | 3.5Fr | 150cm |
PTRAのデバイス準備まとめ
PTRAには必須で準備するデバイスが4種類
- ガイディングカテーテル
- ガイドワイヤー
- バルーンカテーテル
- ステント
準備するデバイス量は多くはないが、頻繁に行われる症例ではないのでとっさに何が必要か、どんな製品があるのか答えられないかもしれない。そんな時はここを見返してもらえると良いかと思います。
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